にほんばしあたり
日本橋あたり

冒頭文

その時分、白米の價(あたひ)が、一等米圓に七升一合、三等米七升七合、五等米八升七合。お湯錢が大人(おとな)二錢か一錢五厘といふと、私は、たいした經濟觀念の鋭い小娘であつたやうであるが、お膳の前へ坐ると、頂きますとお辭儀(じぎ)をするし、お終ひになると、御馳走さまといつたり、さうでもないと、默つて一禮して、お膳を下(さ)げてもらうといつた、お行儀はよいが、世の中のことなんにも知らない、空々寂々(くう

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」1937(昭和12)年10月1日

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日