なつのおんな
夏の女

冒頭文

一夏、そのころ在阪の秋江氏から、なるみの浴衣の江戸もよいが、上布(じやうふ)を着た上方の女の夏姿をよりよしと思ふといふ葉書が來たことがある。ふといま、そのことを思ひだした。 上布には、くつきりした頸(えり)あし、むつちりした乳房のあたりの豐けさをおもはされる。落附いた御内室(ごないぎ)さんである。なるみの浴衣は洗ひがみの、脊のすらりとした、といつて、お尻に女らしい艶やかさをうしなはない、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「週刊朝日」1922(大正11)年

底本

  • 随筆 きもの
  • 実業之日本社
  • 1939(昭和14)年10月20日