つくだのわたし
佃のわたし

冒頭文

暗(やみ)の夜更(よふけ)にひとりかへる渡(わた)し船(ぶね)、殘月(ざんげつ)のあしたに渡る夏の朝、雪の日、暴風雨(あらし)の日、風趣(おもむき)はあつてもはなしはない。平日(なみひ)の並のはなしのひとつふたつが、手帳のはしに殘つてゐる。 一日のはげしい勞働につかれて、機械が吐くやうな、重つくるしい煙りが、石川島(いしかはじま)の工場の烟突から立昇つてゐる。佃(つくだ)から出た渡船(わ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日