せんやく
煎薬

冒頭文

腸を拂ふと欝血散じ、手足も暖まり頭輕く、肩張りなんぞ飛んでゆくと、三上の友人が漢方醫を同道されて、藥効神のごとしといふ煎藥をすすめてゆかれたので、わたしはそれを一服、ちよつと失禮して見た。 煎藥を、苦(にが)い顏をして飮み下したわたしは、あれとこれと、今日から明日中にしてしまふ仕事のはかどりを考へてニコついてゐた。頭をはつきりさせておかないことには、卅一日あると思つてゐたのが三十日ぎりで

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「あらくれ」1936(昭和11)年10月2日

底本

  • 随筆 きもの
  • 実業之日本社
  • 1939(昭和14)年10月20日