しゅんしょうぎご
春宵戯語

冒頭文

ふと、ある日、菜の花のお漬(つ)けものがございますかとAさんにお目にかかつたとき、關西(かみがた)の郊外の話から、お訊ねしたことがあつた。それは、ずつと前に、たしかに菜の花であらうと思ふのを食べた、その風味(ふうみ)を忘れないでゐたからだつた。 ありますとも、しかし、あれは、はじめに出たしんを止めて、二度目に一本出た花の、頭のさきを、ちよぼつと摘んだのがよろしいと委(くは)しくをしへてい

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「週刊朝日」1936(昭和11)年3月1日

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日