かわかぜ
河風

冒頭文

江東水の江村の、あのおびただしい蓮が、東京灣の潮がさして枯れさうだといふ、お米も枯れてしまつたといふ、葛飾の水郷もさうして、だん〴〵と工場町になるのだらう。龜井戸の後(うしろ)など汽車の窓からみると、紅白の花が可哀さうなほど汚ならしくぎら〴〵した蓮田がある。 隅田川流域——たつた一筋の東京をつらぬく川、むかしは武藏下總のなかを流れた大川筋の、武藏側の、今戸、橋場のさきには潮入村といふ名が

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「週刊朝日」1933(昭和8)年8月

底本

  • 随筆 きもの
  • 実業之日本社
  • 1939(昭和14)年10月20日