りょうごくこんじゃく
両国今昔

冒頭文

櫓太鼓にフト目をさまし、あすは……といふけれども、昔ぼくが成人した家は、風の加減で東から大川を渡つてとうとうと回向院の櫓太鼓が聞えたものだつた。ぼくの名は生れ落ちてからこれが本名であるが、この荘の字をよく人に庄屋の庄の字と間違へて書かれることがある。昔は川向うの行司木村庄某あてのハガキや手紙が番地が不完全だとぼくの家へ舞込むと同時に、ぼくへの通信がまた一応両国橋を向うへ渡つて附箋をつけて戻されたこ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 東京の風俗
  • 冨山房百科文庫、冨山房
  • 1978(昭和53)年3月29日