おきゅう
お灸

冒頭文

お灸(きう)ずきの祖母が日に二三度づつお灸をすゑる。もの心覺えてから灸點の役が、いつかあたしの仕事になつてゐた。五百丁の巴(ともゑ)もぐさをホグして、祖母の背中の方へ∱E(まは)ると、小さい燭臺(しよくだい)へ蝋燭をたて、その火をお線香にうつして、まづ第一のお灸を線香でつらぬき、口の中でブツブツ言つて、體中を手早く御祈祷するやうな手附きをした。いづれなんとか文句があつたのであらうが、おそはつた時か

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「不同調」1928(昭和3)年

底本

  • 中央公論社
  • 1939(昭和14)年2月10日