おおかわばた
大川ばた

冒頭文

大川は、東京下町を兩斷して、まつすぐに流れてゐる。 その古の相貌は、まことに美しい潮入り川で、蘆荻ところどころ、むさしの側は、丘は鬱蒼として、下總野(しもふさの)の、かつしかあがたは、雲手(くもで)の水に水郷となり、牛島の御牧(みまき)には牛馬が放牧されてゐた。北には筑波が朝紫に、西に富士はくれなゐの夕照(ゆふばえ)にくつきりと白く、東南に安房上總は青黛のやうに、海となる空のはてに淡い。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 随筆 きもの
  • 実業之日本社
  • 1939(昭和14)年10月20日