「かくしぎ」いへん |
「郭子儀」異変 |
冒頭文
柳里恭(りうりきやう)の「郭子儀(くわくしぎ)」の對幅が、いつのころかわたくしの生家(うち)にあつた。もとより柳里恭の眞筆ではない。ほんものならば、その頃でも萬といふ級の取引であつたらう。或はわたくしのうちにあつた、その寫しものでも今日の賣立などであつたら、矢張り萬とか千とかいふ代物であつたかも知れない。 それは、とて大幅で、書院がけとでもいふのか、もとよりわたくしの生家(うち)の、茶が
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「東陽 昭和十一年六月號」1936(昭和11)年6月
底本
- 桃
- 中央公論社
- 1939(昭和14)年2月10日