ひのかかと
火の踵

冒頭文

……音楽爆弾。 突然、その言葉が頭の一角に閃光を放つと、衝撃によろめくやうにしながら人混のなかで立留まつてゐた。たつた今、無所得証明書とひきかへに封鎖預金から千円の生活費を引出せたので、その金はポケツトの中にあつた。それほどの金では一ケ月の生活を支へることも不可能だつたが、その金すら、いつ紙屑同然のものと化するかわからない。今も今、ポケツトの中の新円は加速度で価値を低下しつつある。それど

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の原爆文学1 原民喜
  • ほるぷ出版
  • 1983(昭和58)年8月1日