ノンシャランどうちゅうき 08 えんびふくのじさつ ――ブルゴオニュのぶどうまつり――
ノンシャラン道中記 08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――

冒頭文

一、因果は廻(めぐ)る小屋馬車(ルウロット)の車輪。さわやかな初秋の風が吹きまわるある午後のこと、雛壇(ひなだん)のように作られた、ソオヌ谷の、目もはるかな見事な葡萄畑の下を、通常、「無宿衆(ノマアド)」と呼ばれる渡り見世物(フォラン)師の古びた小屋馬車(ルウロット)が、やせた二匹の馬にひかれてのろのろと埃りをあげながら進んで行った。 このあたりは、「オオル・リイニュ」とか、「タン・ド・

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1934(昭和9)年8月号

底本

  • 久夫十蘭全集 Ⅵ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年4月30日