キャラコさん 07 うみのすりえ
キャラコさん 07 海の刷画

冒頭文

一 まだ十時ごろなので、水がきれいで、明るい海底(うみぞこ)の白い砂に波の動きがはっきり映る。その白い幻灯のなかで、小指の先ぐらいの小さな魚がピッピッとすばやく泳ぎ廻っている。 硝子(ガラス)細工のような透明な芝蝦(しばえび)の子。気取り屋の巻貝(まきがい)。ゼンマイ仕掛けのやどかり。……波のうねりが来るたびに、みんないっしょくたになって、ゆらゆらと伸びたり縮んだりする。 「

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1939(昭和14)年9月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅶ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年5月31日