キャラコさん 04 おんなのて
キャラコさん 04 女の手

冒頭文

一 キャラコさんは、ひろい茅原(かやはら)のなかに点綴(てんてつ)するアメリカ村の赤瓦(あかがわら)を眺めながら、精進湖(しょうじこ)までつづく坦々(たんたん)たるドライヴ・ウェイをゆっくりと歩いていた。山中湖畔のホテルに、従兄(いとこ)の秋作氏の親友の立上氏が来ていて、これからのキャラコさんの旅行の方針について、いろいろと相談にのってくれるはずだった。 籠坂(かござか)峠へかかろ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1939(昭和14)年4月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅶ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年5月31日