キャラコさん 02 ゆきのやまごや
キャラコさん 02 雪の山小屋

冒頭文

一 雲ひとつない紺碧(こんぺき)の空。 波のようにゆるく起伏する大雪原を縁(ふち)取りした、明るい白樺の疎林や、蒼黝(あおぐろ)い針葉樹の列が、銀色の雪の上にクッキリと濃紫(こむらさき)の影をおとし、岳樺(たけかば)の枝に氷雪がからみついて降誕祭(クリスマス)の塔菓子のようにもっさりともりあがり、氷暈(ハロオ)に包まれてキラキラと五彩にきらめきわたっている。 「ヤッホー」

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1939(昭和14)年2月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅶ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年5月31日