キャラコさん 01 しゃこうしつ
キャラコさん 01 社交室

冒頭文

一 青い波のうねりに、初島(はつしま)がポッカリと浮んでいる。 英国種の芝生が、絨氈(じゅうたん)を敷いたようにひろがって、そのうえに、暖い陽(ひ)ざしがさんさんとふりそそいでいる。 一月だというのに桃葉珊瑚(ておきば)の緑が眼にしみるよう。椿の花が口紅(ルウジュ)のように赤い。 正月も半ばすぎなので、暮から三(さん)ガ日(にち)へかけたほどの混雑はないが、それ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1939(昭和14)年1月号

底本

  • 久生十蘭全集 Ⅶ
  • 三一書房
  • 1970(昭和45)年5月31日