はいきょから
廃墟から

冒頭文

八幡村へ移つた当初、私はまだ元気で、負傷者を車に乗せて病院へ連れて行つたり、配給ものを受取りに出歩いたり、廿日市町の長兄と連絡をとつたりしてゐた。そこは農家の離れを次兄が借りたのだつたが、私と妹とは避難先からつい皆と一緒に転がり込んだ形であつた。牛小屋の蠅は遠慮なく部屋中に群れて来た。小さな姪の首の火傷に蠅は吸着いたまま動かない。姪は箸を投出して火のついたやうに泣喚く。蠅を防ぐために昼間でも蚊帳が

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の原爆文学1 原民喜
  • ほるぷ出版
  • 1983(昭和58)年8月1日