一 「ああ、奥さん、」 と言った自分の声に、ふと目が覚めると……室内(まのうち)は真暗(まっくら)で黒白(あやめ)が分らぬ。寝てから大分の時が経(た)ったらしくもあるし、つい今しがた現々(うとうと)したかとも思われる。 その現々たるや、意味のごとく曖昧(あいまい)で、虚気(うっかり)としていたのか、ぼうとなっていたのか、それともちょいと寝たのか、我ながら覚束(おぼつか)ないが、 「ああ、奥さ