ぬまふじん
沼夫人

冒頭文

一 「ああ、奥さん、」 と言った自分の声に、ふと目が覚めると……室内(まのうち)は真暗(まっくら)で黒白(あやめ)が分らぬ。寝てから大分の時が経(た)ったらしくもあるし、つい今しがた現々(うとうと)したかとも思われる。 その現々たるや、意味のごとく曖昧(あいまい)で、虚気(うっかり)としていたのか、ぼうとなっていたのか、それともちょいと寝たのか、我ながら覚束(おぼつか)ないが

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年2月22日