あるおんなのさいばん
ある女の裁判

冒頭文

一 ああ! 漸く、ほんとにやうやく、今日もまた今のびのびと体を投げ出すことの出来る時が来ました。けれど、もう十一時半なんです。此の辺では真夜中なんです。そして、今日の裁判所での半日は、それでなくても疲れ切つてゐる私を、もうすつかりへとへとに疲らして仕舞ひました。 出来るなら私は其処から真直ぐに家へ帰つて何も彼も投げ出して、寝床にころげ込みたいと思ひました。でも、南品川の叔父さんと叔母さ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「解放 第二巻第二号」1920(大正9)年2月1日

底本

  • 定本 伊藤野枝全集 第一巻 創作
  • 學藝書林
  • 2000(平成12)年3月15日