せいかつのたんきゅう
生活の探求

冒頭文

一 今年は春から雨の降ることが少なかつた。 山林を切り開いて作つた煙草畑まで、一町餘りも下の田の中の井戸から、四斗入りのトタンの水槽(タンク)を背負つて、傾斜七十度の細い畦道を、日に幾度となく往き還りする老父の駒平の姿はいたいたしい。時には握飯を頬張りながら、葉煙草に水をやつてゐるやうな姿を見ることもある。 今年大學にはいつた息子の杉野駿介は、病氣が治り、健康がすつかりもとに返つても、な

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「書きおろし長篇小説叢書 第二巻」河出書房、1937(昭和12)年10月27日発行

底本

  • 島木健作作品集 第二卷
  • 創元社
  • 1953(昭和28)年6月30日