いととりぬま
糸繰沼

冒頭文

湖、青森(あおもり)あたりだとききました、越中(えっちゅう)から出る薬売りが、蓴菜(じゅんさい)が一(いっ)ぱい浮いて、まっ蒼(さお)に水銹(みずさび)の深い湖のほとりで午寐(ひるね)をしていると、急に水の中へ沈んでゆくような心地(こころもち)がしだしたので、変だと思っていると、何処(どこ)でか幽(かす)かに糸車(いとぐるま)を廻す音がきこえたともうします。おやと気をつけると、暗いところがほんのり

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2007(平成19)年7月10日