それでもわたしはいく
それでも私は行く

冒頭文

四条河原町 一 先斗町と書いて、ぽんと町と読むことは、京都に遊んだ人なら誰でも知っていよう。 しかし、なぜその町——四条大橋の西詰を鴨川に沿うてはいるその細長い路地を、先斗町とよぶのだろうか。 「ポントというのはポルトガル語で港のことだ。つまり鴨川の港という意味でつけた名だと思う」 と、ある人が説明すると、 「いや、先斗町は鴨川と高瀬川にはさまれた堤

文字遣い

新字新仮名

初出

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

底本

  • 定本織田作之助全集 第六巻
  • 文泉堂出版
  • 1976(昭和51)年4月25日