ニュー・ヨーク 『せいしゅんのじがぞう』より |
ニュー・ヨーク 『青春の自画像』より |
冒頭文
考えると、ずいぶん馬鹿げた服装をしていたものだ。頭には、山高帽という奴をかぶっていたし、口にはチョビ髯、手に贋革の鞄、厚ぼったい灰色の外套を着こんで、片手に例のステッキ。そのころは、まだ流行にならなかった活動のチャップリンにどうやら似通よった姿であった。このほとんどは、シカゴ製のもので、日本から身につけて来たものと云っては何一つない。いわば七ヶ年で、完全に日本から脱皮した自分であった。
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 日本の名随筆 別巻31 留学
- 作品社
- 1993(平成5)年9月25日