わがこころのおんな
わが心の女

冒頭文

僕がこのQ島に来てから二週間の見聞は、すでに三回にわたつてRTW放送局へ送つたテレヴィによつて大体は御承知かと思ふ。僕の滞留許可の期限は明日で切れるのだが、思ひがけぬ突発事故のため、出発は相当延びることになりさうだ。その突発事故といふのは、第一には僕を襲つた恋愛であり、第二には、昨日この島に勃発(ぼっぱつ)した革命騒ぎだ。島の政府は、それを反革命暴動と呼んで、規模も小さいし、もはや鎮定されたも同様

文字遣い

新字旧仮名

初出

「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年4月

底本

  • 日本幻想文学集成19 神西清
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年5月20日