よるのとり
夜の鳥

冒頭文

去年の夏のことだ。 H君夫妻が、終戦後はじめて軽井沢の別荘びらきをするといふので、われわれ旧友二三人が招かれたことがある。そのなかに、久しぶりでわれわれの前に姿をあらはしたG君もゐた。これは思ひがけなかつた。 われわれ仲間といふのは、ほんの高等学校の頃に同室だつただけの関係なのだが、そんな漠然とした若い時代の友情が、めいめい別れ別れに大学へ進んでからも、やがて社会へ出てからも、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学界」1949(昭和24)年8月

底本

  • 日本幻想文学集成19 神西清
  • 国書刊行会
  • 1993(平成5)年5月20日