いちろうじん
一老人

冒頭文

一 「諸君! 我輩(わがはい)は……」 突然、悲憤の叫びを上げたのである。 ちょうど甥が出征するという日で、朝から近所の人達が集まり、私もそのささやかな酒宴の席に連っていた。 障子の隙間から覗いた一人が「四郎右衛門の爺様」だと言った。 怒鳴った爺様は、さめざめと泣き出したのである。着物の袖と袖の間に顔を突っ込み、がっくりとして声を発していたが、やがて踵(くびす

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 犬田卯短編集二
  • 筑波書林
  • 1982(昭和57)年2月15日