わかれたるつまにおくるてがみ
別れたる妻に送る手紙

冒頭文

拝啓 お前——別れて了ったから、もう私がお前と呼び掛ける権利は無い。それのみならず、風の音信(たより)に聞けば、お前はもう疾(とっく)に嫁(かたづ)いているらしくもある。もしそうだとすれば、お前はもう取返しの付かぬ人の妻だ。その人にこんな手紙を上げるのは、道理(すじみち)から言っても私が間違っている。けれど、私は、まだお前と呼ばずにはいられない。どうぞ此の手紙だけではお前と呼ばしてくれ。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 黒髪・別れたる妻に送る手紙
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1997(平成9)年6月10日