ディカーニカきんごうやわ こうへん 02 こうたんさいのぜんや
ディカーニカ近郷夜話 後篇 02 降誕祭の前夜

冒頭文

降誕祭まへの最後の日が暮れた。冬の、よく澄みわたつた夜が来た。星はキラキラと、輝やきはじめ、月は、善男善女が楽しく (★)讚仰歌(カリャードカ)を流しまはつて基督を頌(たた)へることの出来るやうに、あまねく下界を照らすため、勿体らしく中空へと昇つた。寒気は朝よりもひとしほ厳しくなつたが、そのかはり、靴の下で軋(きし)む凍(い)てた雪の音が半露里もさきまで聞えるほど物静かな夜である。まだ若い衆連の群

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • ディカーニカ近郷夜話 後篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1937(昭和12)年9月15日