わたしのわかいころ
私の若い頃

冒頭文

私は七八歳の頃、まだ眼が少し見えていたが、その頃何よりもつらく感じた事は、春が来て四月になると、親戚の子や、近所の子が小学校へ上ることで、私も行きたいが眼が癒らない。親達は気やすめに、学校用品を一揃い買ってくれたが、私はその鞄をかけて、学校へ行く真似をして一人で遊んでいた。眼を本につけるようにして、字を教えて貰ったこともあった。またおばあさんに時々学校の門へ遊びに連れて行って貰ったが、中でみんなが

文字遣い

新字新仮名

初出

「古巣の梅」1949(昭和24)年10月5日

底本

  • 心の調べ
  • 河出書房新社
  • 2006(平成18)年8月30日