みみのにっき
耳の日記

冒頭文

友情 いつであったか、初夏の気候のよい日に内田百間氏がひょっこり私の稽古場を訪ねて来て、今或る新聞社の帰りでウイスキーを貰って来たから撿挍にお裾分けしようと言われた。待っていた弟子達は百間先生が来たというので何かひそひそ騒いでいた。百間氏は私に稽古を片附けるようにと言うので私は稽古の合間合間に話をした。こういう時には心嬉しいので稽古もどんどん片附いてゆく。百間氏はこれから次第に暑くなると外へ

文字遣い

新字新仮名

初出

「古巣の梅」1949(昭和24)年10月5日

底本

  • 心の調べ
  • 河出書房新社
  • 2006(平成18)年8月30日