はるさめ
春雨

冒頭文

家の者が、「座右寶」に梅原氏の絵が出ていると言うので、私はさわらせて貰った。さわってみても私に絵がわかる筈はないが、それでもやはりさわってみたい。いろいろと説明を聞きながらさわっている中に、子供の時に見た絵を想像した。 子供の時に見た絵を思い出してみると、主に人物で、景色の絵などはかすかである。私の前にお膳があるとか、茶碗がのっているとか、火鉢があるということがわかると、みんな見えている

文字遣い

新字新仮名

初出

「古巣の梅」1949(昭和24)年10月5日

底本

  • 心の調べ
  • 河出書房新社
  • 2006(平成18)年8月30日