さんいんみやげ |
山陰土産 |
冒頭文
一 大阪より城崎(きのさき)へ 朝曇りのした空もまだすゞしいうちに、大阪の宿を發(た)つたのは、七月の八日であつた。夏帽子一つ、洋傘一本、東京を出る前の日に「出來(でき)」で間に合はせて來た編あげの靴も草鞋をはいた思ひで、身輕な旅となつた。 こんなに無雜作に山陰行の旅に上ることの出來たのはうれしい。もつとも、今度は私一人の旅でもない。東京から次男の鷄二をも伴つて來た。手荷物も少なく
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「大阪朝日新聞」1927(昭和2)年7月~9月
底本
- 現代日本紀行文学全集 西日本編
- ほるぷ出版
- 1976(昭和51)年8月1日