きえん (ともなるがかのがこうにだいす)
機縁 (友なる画家の画稿に題す)

冒頭文

その一 大海(おほうみ)かたち定めぬ劫初(はじめ)の代(よ)に 水泡(みなわ)の嵐たゆたふ千尋(ちひろ)の底。 折しも焔(ほのほ)はゆるき『時』の鎖(くさり)、 まひろく永き刻みに囚(とらは)れつつ、 群鳥(むらどり)翔(かけ)る翼のその噪(さわ)ぎと、 その疾(と)さあらめ、宛(あたか)も眠(ねぶ)り転(まろ)び、 無際の上枝(ほつえ)下枝(しづえ)を火の殻(から)負(お)ひ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「月刊スケッチ 第十一号」1906(明治39)年2月

底本

  • 蒲原有明論考
  • 明治書院
  • 1965(昭和40)年3月5日