『にじゅうごげん』をよむ
『二十五絃』を読む

冒頭文

詩はこれを譬ふれば山野の明暗、海波の起伏なり。新しき歌の巻を読むは、また更にわが身に近くして、さながら胸の鼓動を聴くここちす。今『二十五絃』を繙いて、泣菫子が和魂の帰依に想ひ到れば、この荒びし世をつつむは黄金の靄、白がねの霧——幻夢倐ちに湧きのぼれり。 四季の移りかはりばかりをかしきはあらじ。しかはあれ泣菫子が為めには、こもまた徒(あだ)なる花の開落にあらずして、人生迷悟の境なりき。花ご

文字遣い

新字旧仮名

初出

「明星 巳年第八号」1905(明治38)年8月

底本

  • 蒲原有明論考
  • 明治書院
  • 1965(昭和40)年3月5日