しんどうのし
神童の死

冒頭文

去年の秋、小田原の近在に意外の大惨虐が行はれた。恐らく、この吾が人生に於ける悲劇中の悲劇であらう。而(し)かも私は、未だ曾(かつ)てかゝる神聖無垢な殺人犯を見た事が無い。清純にして無邪、真実にして玲瓏の極、のみならず、単純無比にして深刻無比。而かもまた無心無我の極にあつて、既に恐るべき悪魔的天才の萌芽を示した雋鋭(せんえい)錐(きり)の如き近代の神経と感覚。驚くべきこの犯罪はただ手もなくやつつけら

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻85 少年
  • 作品社
  • 1998(平成10)年3月25日