けいはんぶんけんろく
京阪聞見録

冒頭文

予も亦明晩立たうと思ふ。今は名古屋に往く人を見送る爲めに新橋に來てゐるのだ。待合室は發車を待つ人の不安な情調と煙草の烟とに滿たされて居る。 商標公報といふ雜誌の綴を取り上げて見る。此(ここ)に予は一種の實用的な平民藝術を味ふ事が出來て大に面白かつた。殺鼠劑の商標に猫が手帕(ハンカチ)で涙を拭つて居る圖は見覺えのあるものであるが、PARK 公園などと云ふ石鹸は餘程名に困つた物と見える。それ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「三田文学」1910(明治43年)5月号

底本

  • 現代日本紀行文学全集 西日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日