うらみなきさつじん
恨なき殺人

冒頭文

一 七月初めの日が頭の上でカンカン照りはじめると、山の中は一しきり、ソヨリとした風もなくなっていた。マンゴク網を辷り落る鉱石の響きも、トロッコのきしる音も、すべてが物憂くだらけ切っていた。草木の葉はぐんなりと萎れて、ただ山中一杯にころがっている岩のかけらや硅石の破片(かけ)が、燃えるような日の光りに焦がされてチカチカと、勢いよく輝いているばかりであった。 坑外で働いている者は、掘子も選鉱女も

文字遣い

新字新仮名

初出

「新日本」1917(大正6)年9月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・3 初期プロレタリア文学集(三)
  • 新日本出版社
  • 1985(昭和60)年6月25日