ひな

冒頭文

箱を出る顔忘れめや雛(ひな)二対(つゐ)  蕪村 これは或老女の話である。 ……横浜の或亜米利加(アメリカ)人へ雛(ひな)を売る約束の出来たのは十一月頃のことでございます。紀の国屋と申したわたしの家は親代々諸大名のお金御用を勤めて居りましたし、殊(こと)に紫竹(しちく)とか申した祖父は大通(だいつう)の一人にもなつて居りましたから、雛もわたしのではございますが、中々見事に出来て

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1923(大正12)年3月

底本

  • 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日