カライはかせのりんじゅう じんせいのもっともげんしゅくであるべきしゅんかんに、わたくしがもしわらいのしょうどうをおさえることができぬとしたら、いったいどんなつみにとわれるであろう?
カライ博士の臨終 人生の最も厳粛であるべき瞬間に、わたくしがもし笑ひの衝動をおさへることができぬとしたら、いつたいどんな罪に問はれるであらう?

冒頭文

人物 加来典重  冬菜  四紋  ネラ子  雅重 冬菜の母 早見博士 煙(主治医) 細木助教授 大里教授 浦(玉石堂主人) 津丸(雑誌記者) 看護婦 一 ある大学の哲学教授、加来典重は、カントの研究家としてその名を知られ、近年は、ハイデッゲルなどの名をもその講義の間にしばしばはさみはするが、学生の一人がサルトルについて質問を行つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「世界 第六十一号」1951(昭和26)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集7
  • 岩波書店
  • 1992(平成3)年2月7日