せいぞうとぬま
清造と沼

冒頭文

一 清造(せいぞう)はその朝になって、やっとにぎやかな町に出ました。それは、清造の生まれた山奥(やまおく)の村を出てから、もう九日目くらいのことでした。それまでにも、小さな町や村は通ったことがありましたが、これほどにぎやかな町に出たのはこれがはじめてです。町の両側(りょうがわ)には新しい家がならんでいました。そうしてそれらの店(みせ)には、うまそうなおかしだの、おもちゃのようにきれいなかんづ

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」赤い鳥社、1928(昭和3)年1月号

底本

  • 赤い鳥代表作集 2
  • 小峰書店
  • 1958(昭和33)年11月15日