さっぽろ
札幌

冒頭文

半生を放浪の間に送つて來た私には、折にふれてしみじみ思出される土地(ところ)の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい樣な懷しい記憶を私の心に殘した土地は無い。あの大きい田舍町めいた、道幅の廣い物靜かな、木立の多い洋風擬(まが)ひの家屋の離れ〴〵に列んだ——そして甚麽(どんな)大きい建物も見涯のつかぬ大空に壓しつけられてゐる樣な石狩平原の中央(ただなか)の都の光景(ありさま)は、やゝもすると私の目に浮ん

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木作品集 第三巻
  • 昭和出版社