しんらん
親鸞

冒頭文

一 人間性の自覚 親鸞の思想は深い体験によって滲透されている。これは彼のすべての著作について、『正信偈』や『和讃』のごとき一種の韻文、また仮名で書かれたもろもろの散文のみでなく、特に彼の主著『教行信証』についても言われ得ることである。『教行信証』はまことに不思議な書である。それはおもに経典や論釈の引用から成っている。しかもこれらの章句があたかも親鸞自身の文章であるかのごとく響いてくるので

文字遣い

新字新仮名

初出

「展望」1946(昭和21)年1月

底本

  • 現代日本思想大系 33
  • 筑摩書房
  • 1966(昭和41)年5月30日