かっしょくのぐどう
褐色の求道

冒頭文

独逸(ドイツ)に在る唯一の仏教の寺だという仏陀寺(ブッダハウス)へ私は伯林(ベルリン)遊学中三度訪ねた。一九三一年の事である。 寺は伯林から汽車で一時間ほどで行けるフロウナウという町に在った。噂ほどにもない小さな建物で、町外(はず)れの人家の中に在った。流石(さすが)に其処(そこ)だけは自然に土盛りが高くなっていて、多少の景勝の地は占めている。その隆起の峯続きを利用して寺の主堂、廊、翼堂

文字遣い

新字新仮名

初出

「宗教公論」1935(昭和10)年2、3月号

底本

  • 岡本かの子全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1994(平成6)年2月24日