らくいんをおされて |
烙印をおされて |
冒頭文
右腕の神経痛が始まつたので、私はここ数日床の中で朝夕を送り迎へてゐる。神経痛といつても私のはごく軽微なものであるが、それでも夜間など、一睡も出来ないまま夜を明かすこともある。これは気温の高低に非常に敏感で、そのため夜になつてあたりの温度が下つて来ると激しい痛みが襲つて来るのである。丁度筋肉と骨の間に、煮滾つた熱湯を流し込まれるやうな感じで、ひどい時には痛む腕を根本(ねもと)から断(き)り除(と)つ
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 定本 北條民雄全集 下巻
- 東京創元社
- 1980(昭和55)年12月20日