ひいらぎのかきのうちから
柊の垣のうちから

冒頭文

序 心の中に色々な苦しいことや悩しいことが生じた場合、人は誰でもその苦しみや懊悩を他人に打明け、理解されたいといふ激しい慾望を覚えるのではないだらうか? そして内心の苦しみが激しければ激しいほど、深ければ深いほど、その慾望はひとしほ熾烈なものとなり、時としてはもはや自分の気持は絶対に他人に伝へることは不可能だと思はれ、そのために苛立ち焦燥し、遂には眼に見える樹木や草花やその他一切のものに向つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新女苑」1938(昭和13)年3月

底本

  • 定本 北條民雄全集 下巻
  • 東京創元社
  • 1980(昭和55)年12月20日