胸までつかる深い湯の中で腕を組んで、私は長い間陶然としてゐた。ひどく良い気持だつた。外は凩が吹いて寒い夜だつたが、私は温かい湯に全身を包まれてゐるので、のびのびとした心持であつた。私は結婚したばかりのまだ十八にしかならない妻のことを考へてゐたのである。春になつたら、田植時までの暇な時期を選んで彼女を東京へ連れて行つてやらう、なんにも知らない田舎娘の彼女はどんなにびつくりすることだらう、電車や自動車