だんそう
断想

冒頭文

自殺を覚悟するとみな一種の狂人か、放心状態に陥る。これが僕には不快なんだ。ただただ不快なんだ。さういふ状態になつて自殺するのは決して自殺とは言へないんだ。それは殺されたのだ。病気に、運命に、殺されたのだ。僕は自殺を希んでゐるけれど、殺されるのは断じて嫌だ。僕は自殺したいんだ。死の瞬間まで、自己をじつと見つめて、理性で一切を統禦する時、初めて「自殺」は可能なのだ。それは理性によつて運命を、病気を、征

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 定本 北條民雄全集 下巻
  • 東京創元社
  • 1980(昭和55)年12月20日