せいしんのへど ――てちょうより――
精神のへど ――手帳より――

冒頭文

「兄弟よ。汝は軽蔑といふ言葉を知つてゐるか? 汝を軽蔑する者に対しても公正であれといふ、公正さの苦悩を知つてゐるか?」 諸君よ、諸君にこのニイチェの苦悩が判るか? 過去幾千年の屈辱の歴史が、諸君の心臓を掻きむしりはしないか。諸君の心臓は破れはしないのか。諸君はまだ青空が見えるものと信じてゐるのか? 何処にも青空などありはしないのだ。 兄弟諸君よ、君は君の足下に底知れぬ深淵が口を開

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 定本 北條民雄全集 下巻
  • 東京創元社
  • 1980(昭和55)年12月20日