けいじつざっき |
頃日雑記 |
冒頭文
朝、起き上るたびに私は一種不可解な気持をもつてあたりを見廻さずにはゐられない。夜が明けるたびに起き上つてはごそごそと動き始める日々といふものを、もう二十年あまりも続けてゐるのであるが、しかしこの単調さにも腐敗しない人間の心理といふものはなんといふ不思議さであらう。況や起き上るたびにもう動き出さうとむづむづしてゐる肉体を感ずる時、いつたい人間を何と解いたら良いのであらうか。睡眠という空白(ブランク)
文字遣い
新字旧仮名
初出
「科学ペン」1938(昭和13)年
底本
- 定本 北條民雄全集 下巻
- 東京創元社
- 1980(昭和55)年12月20日