まきろうじん
間木老人

冒頭文

この病院に入院してから三ヶ月程過ぎたある日、宇津は、この病院が実験用に飼育してゐる動物達の番人になつてはくれまいかと頼まれた。病院とはいへ、千五百名に近い患者を収容し、彼等同志の結婚すら許されてゐるここは、完全に一つの特殊部落で、院内には土方もゐるし、女工もゐるし、若芽のやうな子供達も飛び廻つてゐて、その子供達のためには、学校さへも設けられてあつた。患者達も朽ち果てて行く自分の体を、毎日ぼんやり見

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学界」1935(昭和10年)11月号

底本

  • 定本 北條民雄全集 上巻
  • 東京創元社
  • 1980(昭和55)年10月20日